キャズム理論で有名なジェフリー・ムーアがサッカーを観戦中に思いついたであろう「ゾーンでマネージメントを考える本」。イノベーションマニア、組織マニア、スポーツ大好きなムーア氏の本でも出色の一冊。
サッカー好きのバイアス込みで、組織の好守について示唆に富んだ名著。ちょっと前に読んで、良い本だったな~と心に残ったので、備忘録ついでにブログへ。
サッカーのゾーンみたいに、組織の機能とポジショニングを4つのゾーンでとらえ、各ゾーンで攻守を整える。で、タイミングを見極めて新規事業を育成して一点突破しましょうという内容。
ざっくり要約すると以下のような感じ。
・イノベーションは起きないことではなく、育成・拡大できないのが問題
・ポジショニングを整えて高成長カテゴリーで新規事業を展開する
・差別化の要因となるコアな企業活動を優先させる
・2つの最高優先順位は存在しない。一つのことだけやる
・全事業のポートフォリオの10% 以上の収益を新規事業から生み出す
「毎年、既存の全事業のポートフォリオの10%以上の収益を新規事業から」というテーマは端くれの経営者としてはグサッと刺さる。
人も組織も、常に新しいことを生み出し続けないといずれは溺死する。小さい組織であったとしてもゾーンマネージメントしないとダメっぽい。
4つのゾーンとは?
- 既存事業ゾーン = ハイパフォーマンス・ゾーン
- 生産性ゾーン = プロダクティビティ・ゾーン
- 新規拡大ゾーン = インキュベーション・ゾーン
- 新規育成ゾーン = トランスフォーメーション・ゾーン
本著ではこの4ゾーンそれぞれについて、攻撃と防御をどうすれば良いかがウニウニと書かれている。例えば、生産性ゾーンのレガシーのプロダクティビティでは守備に徹するべき。新しいシステムの投入は意味がない、とか。
基本的には攻撃の芽となる新規育成・トランスフォーメーションにリソースを再配分して、イノベーションのビックウェーブをとらえて会社をいい波に乗せて成長させるべきという趣旨のマネージメント理論。
シスコはラウンド制の独立事業ユニット IOU でインキュベーションの管理をしているらしい。スタートアップみたいにシリーズA、B、C でチームを回転させて取捨選択。勝ち残ったユニットを昇格させて育成。
サイバーエージェントの事業もディビジョン制だったような。
リーダーが陥りがちなミスが「複数の新規育成を同時にやる」こと。
攻撃と防御の必要があるなら、まずは防御を固めて安定させる。それから一つの事業に絞って新規事業を育成するのが鉄則。
組織について書かれたマネージメント本は似たような内容ばかりだけど、ジェフリー・ムーアは芯を食ってて、独自性が高いので記憶に残る。次はキャズム2あたりを読んでみたい。
3Mの15%カルチャー、グーグルの20%ルールみたいに、組織として新しいことに取り組んで小さくでも結果をだす仕掛けがないと、生存できないんだなと常々おもっているので、記憶に残る一冊だった。
ゾーンマネジメントを取り入れて「ポートフォリオの10%が新規事業」という状態を実現したいところ。